◆ 英米文化学会 第147回例会のお知らせ (例会担当理事: 河内裕二) 日時:平成27年6月13日(土)午後3時00分〜6時00分 午後2時30分受付開始 場所:日本大学文理学部 3号館4階 3404教室 (京王線 下高井戸あるいは桜上水下車、徒歩8分) 懇親会:会場:学生食堂(秋桜) 3号館1階 時間:午後6時〜8時 懇親会のみの参加も歓迎いたします。 会費:3,000円 開会挨拶 英米文化学会理事長 大東俊一 (人間総合科学大学) (3:00−) 研究発表 1. ガウェインの非運と失敗:マロリー『アーサー王の死』における 騎士のアンビバレンス (3:10−4:00) 発表 長谷川千春 (大東文化大学) 司会 北林光 (大東文化大学) 休憩(4:00−4:20) 2. 『カーリュー・リヴァー』に隠されたイメージ ―『スターバト・マーテル』外伝 (4:20−5:10) 発表 式町眞紀子 (法政大学) 司会 永田喜文 (明星大学) 閉会挨拶 英米文化学会副会長 君塚淳一 (茨城大学) (5:10−) 臨時総会 (5:20−5:50) 研究発表抄録 1. ガウェインの非運と失敗:マロリー『アーサー王の死』における 騎士のアンビバレンス 長谷川千春 (大東文化大学) " サー・トマス・マロリー(Sir Thomas Malory)の『アーサー王の死』(Le Morte Darthur, 15世紀後半)における騎士ガウェインの性格には二面性がある。一方でガウェインは軽率・不誠実 ・不敬な言動をする。また他方において、彼には、思慮深く、誠実で、忠義深い要素もある。 この現象はマロリーが様々な原典を組み合わせたことから生じている。しかし、中世イギリス ・フランスのアーサー王ロマンスがガウェインを異なった視点で描いているという事実を、単なる 性格描写の相違と結論付けるだけでは不十分である。そこで本発表ではまず、ガウェインの性格付けの 源泉を確認し、彼が未熟な失敗者であるという議論も踏まえ、マロリーの『アーサー王の死』の分析を 始める。そして、本作品ではガウェインの欠点のみが強調されているだけでなく、結果的には 後悔の念に苛まれる彼の非運な境遇が描かれていることを考察する。 " 2. 『カーリュー・リヴァー』に隠されたイメージ ―『スターバト・マーテル』外伝 式町眞紀子 (法政大学) " ベンジャミン・ブリテン(Benjamin Britten, 1913-76)作曲の『カーリュー・リヴァー』 (Curlew River, 1964年初演)は、能『隅田川』に基づいた作品である。『隅田川』では、 誘拐された息子を捜し求める母の哀しみが劇を進行させ、念仏の中で結末を迎えるように、 母としての哀しみは取り残されたままだが、『カーリュー・リヴァー』では、母の哀しみは 復活の喜びを内在する姿で描かれている。この母の姿に重なるのは、13世紀以降のモチーフ として絵画や音楽でしばしば使われた「哀しみの聖母」であり、一例として、カトリック聖歌の 『スターバト・マーテル』(Stabat Mater)がある。低教会に所属しつつ、音楽的憧憬を 高教会やカトリックに求めたブリテンと『スターバト・マーテル』の接点のひとつとして、 盟友レノックス・バークレー(Lennox Berkeley, 1903-89)が1947年、ブリテンに同曲を 献呈したことが挙げられる。本発表では、「『カーリュー・リヴァー』から日本的なものは 排除した」というブリテンの発言を率直に受け止め、その狙いを、『スターバト・マーテル』 の系譜に連なろうとする野心的な試みだったとして考察する。"